悪玉菌の重要な役割

腸内細菌の健康的な割合は、善玉菌2、悪玉菌1、日和見菌7の割合だとされています。これは常識として語られていることですが、「なぜ悪玉菌が必要なのか」という疑問を抱く人は当然としています。その当然のことを、問い合わせてきたメディア関係者がいました。
悪玉菌は大腸菌やウェルシュ菌、ブドウ球菌などの腸内で腐敗を起こす菌で、便秘や下痢の原因となることが知られています。また、インドールやスカトール、アンモニア、硫化水素などの有害物質を作り出しています。悪玉菌が多いと免疫力が弱まり、発がん物質を作り出すこともあり、これだけを見ると必要とは思えないというのも理解できます。
悪玉菌の中でも大腸菌は重要な役割をしています。腸内では腸内細菌によってビタミンの合成が行われています。ビタミンの合成というと善玉菌のビフィズス菌がビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂などのビタミンB群を作り出していることが知られていますが、これらの合成は善玉菌だけが行っているわけではなく、大腸菌もビタミンK、ビタミンB₂、ビタミンB₆、ビタミンB₁₂、ビオチン、パントテン酸、葉酸、ナイアシンを作り出しています。大腸菌が存在していなければ、ビタミンの合成が充分に行われないということです。
食物繊維は、一般には分解(消化)も吸収もされない性質がありますが、分解されないのは胃でのことで、吸収されないのは小腸でのことで、大腸では腸内細菌のおかげで食物繊維が分解されて、その中の成分も吸収されます。
大腸菌は、もう一つ重要な役割をしていて、身体に害をなす病原菌と腸内で戦っています。病原菌は大腸菌と戦って、負けなかったとしても弱まって、これと体内の免疫細胞が戦うことになります。悪玉菌は免疫の維持には欠かせないものなのです。悪玉菌は、ずっと腸内に存在していて、外敵と戦う常在菌となっているわけですが、腸内だけでなく皮膚にも常在菌がいます。その中には有害な菌もいるのですが、これが外敵と戦って、免疫の第一防衛ラインとなっています。
それだけ重要な免疫システムなので、下痢をして腸内細菌が多く外に出されるようなことがあっても、悪玉菌は急速に増えていきます。善玉菌は一定の温度の中で増えるのですが、悪玉菌は温度が低い環境でも増えていきます。一気に増えるのは悪玉菌のほうとなっていて、これも身体を守るためのメカニズムといえます。