発達障害の感覚過敏は自律神経の調整を乱すのか

発達障害は自律神経の調整が乱れがちであることが指摘されています。自律神経の乱れは五感に影響されることが知られていて、発達障害の自閉症スペクトラム障害に多くみられる感覚過敏は自律神経の乱れを悪化させるのかという疑問があげられることがあります。自律神経の乱れを起こす大きな原因として指摘されているのは睡眠のリズムです。決まった時間に入眠して、決まった時間に起床して生活リズムが整えられていると、自律神経の交感神経と副交感神経の働きが正常に保たれるようになります。
入眠を妨げることがあると、乱れの原因になっていくわけですが、眠りに影響するものとしては温度、湿度、光、音、臭いなどがあります。入眠のために室内環境を整えてあげたとしても、臭いだけは部屋の隙間からも侵入してくるため、これを完全に防ぐのは難しいことです。
不快な臭いがすることで心拍数や呼吸数が増え、血圧が上昇して、血流が低下するということが起こります。これは興奮系の交感神経の働きが盛んになったときに起こることです。自律神経の交感神経は昼間の時間帯に働きが盛んになり、夕方以降は副交感神経に支配されます。その状態で入眠することができれば、落ち着いた状態で就寝して、寝ている間に疲労が取れ、脳や内臓も休めることができるようになります。ところが、これから眠ろうとするときに、または眠っているときに交感神経の働きが盛んになってしまうと、心身ともに興奮状態で休むことになってしまいます。
匂いは脳を直接刺激することができるために効果が早く、心地よいと感じる匂いでは基本的に副交感神経の働きが盛んになって、これがリラックス効果を生み出してくれます。心地よい匂いの中には少なからず交感神経の働きを盛んにするものも含まれています。種類の異なる臭いを嗅ぐことで自律神経の切り替えができるということで、研究によって副交感神経の働きを盛んにしてくれる匂いを活用したのがアロテテラピーで、ラベンダー、カモミール、ベルガモット、スイートオレンジなどが使われます。
心地よくない臭いのほうは、副交感神経の働きを盛んにするようなことはなくて、交感神経の働きが盛んになるばかりです。副交感神経は心身をリラックスさせて眠りに誘い、眠りを深くする作用があるのに対して、交感神経は目覚めさせるほうの神経であり、身体を活性化させる神経であるために寝つきにくくなり、眠れたとしても眠りが浅くなり、睡眠時間の割には疲れが取れない、疲労の蓄積によって心身の活動の悪影響が起こる、注意力が低下する、不安な感情が高まるといったことになっていきます。
臭いに過敏な人は、不快な臭いを感じると交感神経の働きが特に盛んになりやすく、臭いが気になったときから神経過敏になって交感神経の働きが高まる一方となります。感覚過敏の嗅覚過敏が起こっていると、他の人は気にしないで済む程度の臭いでも、マスキング(他の匂いで悪臭を覆い隠す)をしても悪臭が気になるという過敏反応をしがちです。