糖尿病患者と予備群は増え続けているのか

以前の資料や文献を見て、そのときの認識と現場とのギャップを確認するのを楽しみにしています。糖尿病の患者数は年々増え続けているというのは常識として語られています。1965年(昭和40年)には3万3000人であったのが、1999年(平成11年)には211万5000人になっています。2002年(平成14年)の厚生労働省による糖尿病実態調査の結果では糖尿病患者(糖尿病が強く疑われる人)は約740万人、糖尿病予備群(糖尿病の可能性を否定できない人)は約880万人、合わせて約1620万人と推定されています。
ある有名な栄養学者の著書を参考にしたのですが、その中には「可能性を否定できない人は1620万人」と記載されていました。これを読んだ他社の編集者から「糖尿病予備群が急に減ったのは、なぜですか」という質問があり、その書籍を資料庫から引き出してみて、どうして質問があったのかが理解できました。単純な校正ミスで、ひょっとすると著者の先生が書いたのではなくてライターが書いて確認した先生が見逃したか、どちらかだと思われます。
糖尿病患者と糖尿病予備群を合わせたのが約1620万人で、それが間違ったまま出版されたのですが、あまりに著名な先生の書籍だったので、そのまま信じてしまう人もいるのだということです。
2006年(平成18年)の厚生労働省の国民健康・栄養調査の中で特別に糖尿病の調査結果が発表され、その結果では糖尿病患者は約820万人、糖尿病予備群は約1050万人、合わせて1870万人となっていました。調査法は違うものの、わずか4年で約250万人も増えていました。
そして、翌年の2007年(平成19年)調査の国民健康・栄養調査では糖尿病患者は約890万人、糖尿病予備群は約1320万人、合わせて2210万人となっていたので、このまま進むと、どこまで増えるのかと危機感をもって報道されたものです。
2012年(平成24年)調査の国民健康・栄養調査では糖尿病患者は約950万人と、さらに増えたものの、糖尿病予備群は約1100万人と減り、合計で2050万人と、こちらも減りました。そして、最新の発表の2016年(平成28年)調査の国民健康・栄養調査では糖尿病患者は約1000万人、糖尿病予備群は約1000万人と合わせて約2000万人となり、少し減った結果となりました。
糖尿病患者は増え続けているのだから、その予備群も増え続けているものという前提で糖尿病について報道されているのですが、統計上では2007年調査から10年ほどで予備群も合計数も減っているということです。報道するときには、原本のデータを当たるようにという、当たり前の話をさせてもらいました。