運動をしていたら高血圧の薬が増やされた話

運動をすることは健康づくりの基本で、血圧や血糖値が高くなっている人には、まずは簡単な運動であるウォーキングがすすめられることが多くなっています。血圧は血管が硬くなることが原因の場合のほかに、末梢の血流が低下したことから細胞に送られる血液が減ったために血流を盛んにするように血圧が高まることがあります。中には、血液は充分に送られてきているのですが、栄養不足から細胞に送られるビタミンやミネラルが減ったことから、それを補うために血圧を高めるということも起こります。
運動をすると血流がよくなり、酸素も多く送られるようになって、さらに動脈硬化を進める中性脂肪やブドウ糖がエネルギーとして使われることで血管が健康になっていくというメリットもあります。こういうこともあって運動をしていたのに、血圧や血糖値が充分に下がっていないと、医薬品の種類を変えられたり、量が増やされるということも少なからずあります。
これはセミナーの参加者の質問コーナーであったことですが、「ウォーキングをしていても血圧が下がらなかったので薬を増やされた」という体験談を語ってくれた方がいました。医者が指導したとおりの運動をしているのに血圧が下がらないということは悪化しているから薬を増やそうという発想です。これと同じことは糖尿病にもあって、ウォーキングをして血糖値が下がらないと、運動の効果が現れにくいので薬を増やそうと考えるわけです。
患者の中には、運動をしていないのに指示を守らないとわれてはいけないからと医師に嘘をつく人もいて、それで下がらないなら薬を変えるか増やすしかないと考える医師がいて、実際に必要な量よりも多くを出されてしまったというのは、よく聞くことです。
患者にしたら、努力をしているのに薬を増やされたということで、面倒な運動を辞めてしまおうと考える人も少なからずいます。血圧も血糖値も薬にだけに効果があるのではなくて、食事と運動で充分に対策をして、それで下がりきれなかったら医薬品もプラスするというのが基本的な考えです。だから、歩いていて、運動をしていて効果が現れなかったら「効果のある運動法を教えよう」という答えのほうを望んでいるのに、それは一切なしで、薬だけで下げようとするような対応では困ってしまいます。
医師は病院においては栄養士や健康運動指導士の上位の立場で、医師の指示に従って栄養や運動が実施されているので、医師なら適切な指導ができるものと思われるかもしれませんが、医学部で栄養学や運動科学を学ぶ機会がないまま医師になった人もいます。むしろ栄養学と運動科学の両方を習得している医師は少なく、具体的な指導は無理ということは当然のことです。
そういったことを地方自治体の健康づくりに参加して実感していることから、日本メディカルダイエット支援機構では当たり前の歩くことをプログラムにして、検査数値に合わせた効果的な歩き方の指導に取り組んでいます。
国民健康・栄養調査(平成28年)では糖尿病の患者は約1000万人、その予備群も約1000万人と推定されています。患者調査(平成26年)によると高血圧患者は1010万8000人と推定されています。予備群は1.5倍と言われているので、2500万人にも及ぶはずです。国民健康・栄養調査(平成28年)では糖尿病の割合は男性で34.6%、女性で24.8%となっています。これは成人人口の約1億人に対する割合なので、3000万人であってもおかしくはありません。
こんな状態で、もっと増えていくことは容易に想像がつくことなので、状態に合った歩き方の指導を自治体が中心になって始めるのは当然の流れといえます。